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談山会(たんざんえ)

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京都に秋が深まる11月17日は、藤原鎌足公のご命日として、本願寺で談山会という珍しい法要がお勤まりになります。藤原鎌足公とは、中大兄皇子(後の天智天皇)と共に歴史上大変有名な大化の改新を行った中臣鎌足のことで、臨終に際して大織冠とともに藤原姓を賜ったといわれています。

本願寺第三代宗主覚如上人が記された御伝鈔より伺いますと、「親鷲聖人は藤原氏の流れを汲むお方です。藤原氏の氏神である天児屋根尊から数えて、二十一代の子孫に大織冠の藤原鎌足がおいでになり、その鎌足公から五代の子孫に近衛大将の内麿公がいらっしゃいました。内麿公より六代下った有国卿、更にその五代目に皇太后宮職の大進の位であった日野有範がおいでになり、親鸞聖人はそのお子様でいらっしゃいます。」とあり、親鸞聖人は、藤原鎌足公から17代目の子孫であるということがわかります。

藤原鎌足公は56歳で薨去され、大和の多武峰寺(多武峰妙楽寺)に葬られましたが、明治初期の廃仏毀釈によりその多武峰寺は談山神社となりました。明治23年11月17日の『お日記』には「談山会は大織冠鎌足公の忌日也。本日官祭に付氏の公卿遥拝式を挙行す。依て吾等仏式を以てする故、明治十五年より一般と分離せり、爾来本日阿弥陀堂にて一座執行す。お荘厳如例、阿弥陀堂上卓、打敷・白餅一合、礼盤前机双花(菊花)同脇机共打敷懸之 一中略一 本日は如例枝散華也樒」とあり、明治15年より談山会が始まったことが窺われ、その時には、例の如として枝散華が行われたことが記されています。

本願寺派の散華の作法は、華籠という花かごに入れた華葩(花びらの形をした紙片)を一枚づつ散らすのでありますが、枝散華は、桃・桜の生花または樒の枝を、根もとの方を奉書紙で巻いて持ち、花または葉を摘みとって散らす作法をいいます。『真宗故実伝来抄』には「又行道ノ時、花籠ニ荷葉ノ作リタル花ヲ散ラス、作リ花ナキ時ハ樒ノ葉ヲ用ユ、爾レバ当家ニ樒ヲ用ヒラルルモ、此謂レナリ」とあります。『真宗故実伝来抄』は、明和2年(1765)に成稿されていますので、現在の阿弥陀堂が建立された頃の記録であります。

本願寺の古より始まった枝散華が、現在談山会という法要の中で伝承されています。秋が深まる京都の一日、談山会にお参りされ、宗祖の俗姓に思いを寄せ、古の作法に本願寺の歴史を感じていただければと思います。

tanzan