季節のお荘厳

香炉

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香炉とは香を焚く器のことで、古くは、インド古代の仏教彫刻の中にも見ることができ、日本においても有名な玉虫厨子(7世紀)の側面にもその絵を見ることができます。おそらく仏教伝来と同時に香炉も日本へ伝わったと考えられます。

その香炉の形状は様々であり、机に置くものを一般的に置香炉(おきごうろ)といい、僧侶が保持する柄の付いた香炉を柄香炉(えごうろ)といいます。変わった香炉では、寺院の本堂に入るとき跨(また)いで身体を清浄にする為の、うずくまった像の形をした像香炉(ぞうごうろ)もあります。

本願寺派では大別して、金属製の金香炉、青磁製の土香炉、大型の香炉である常香盤(じょうこうばん)、そして僧侶が保持する柄香炉などの区別があります。その違いの概略を申しますと、金香炉は炭火を入れて香を焚くいわゆる焼香のための香炉です。土香炉はお線香を供えるための香炉です。(本願寺派ではお線香は立てず、横にして供えます)常香盤は、抹香(まっこう)という粉末状の香を灰の上に帯状に連ね、長時間焚いて香を供えるための香炉です。先ほどの土香炉は、小型にした常香盤といえます。柄香炉は法要時に僧侶が保持して聲明などを唱えます。また、本願寺の金香炉には、阿弥陀堂では丸形、御影堂では六角形とその形状に違いがあり、その他にも種々の形をした香炉が使われています。

浄土真宗の根本経典である『仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)』の阿弥陀如来の四十八の願いの中に「極楽浄土にある豪華な建物や清らかな川や美しい花は、いろいろな宝と香りでできていて、その香りはあらゆる世界へ広がり、それに触れた浄土の菩薩は、みな仏道に励む」と説かれています。

私たちが仏様の前でお焼香するとき、その当面の意味はお香をお供えするということでありますが、その香りに触れるとき、「仏道に励んで欲しい」という阿弥陀如来の願いを聞いていることと味わうことができます。そして、阿弥陀様が願っておられる仏道とは、唯一無二、お念仏を称えることでありました。香炉で香を焚きお焼香し念仏を称えることは、まさしく阿弥陀如来の願いの中に包まれる一時でありました。