浄土真宗寺院の本堂の最も聖なる空間である内陣(ないじん)中央には、御本尊である阿弥陀如来をご安置する臺として須弥壇(しゅみだん)が置かれています。須弥壇は、その中程はくびれており、独特の形をしています。
須弥壇は、古代インドの世界観である須弥山説(しゅみせんせつ)をもとに造られたものであります。須弥山説とは、世界の中心には地上の神々が暮らす聖なる山、須弥山がそびえ、その中腹には四王天(持国天・増長天・広目天・多聞天)、頂きには帝釈天(たいしゃくてん)が住み、仏教を守護しているというものです。
しかし、そこは人間が住む同じ迷いの境界である欲界(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天の世界)であり、仏の境界ではありません。浄土真宗では、この須弥山を模した須弥壇の上に阿弥陀如来をご安置しているのですから、私達の迷いの世界に阿弥陀如来が顕現されていることをあらわしているとも言え、大変味わい深いものがあります。
また、本願寺の須弥壇中程のくびれたところには、獅子の彫り物が置かれています。獅子は百獣の王であるから獅子王ともいわれ、その獅子王にたとえて阿弥陀如来は人中の王であることをあらわしていると伺えます。また阿弥陀如来の説法は「説法獅子吼(せっぽうししく)」といわれ、獅子が吼えて百獣を敬服させるように、すべての衆生を信順させる阿弥陀如来の威徳をあらわしているといえます。
2019年12月19日