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阿弥陀経変相図

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この度は、龍谷大学教授稲垣久雄先生が浄土曼荼羅を複製刊行された中の、『阿弥陀経変相図』をご紹介致します。これは、1867年に粉色されたもので、原図は江戸時代のものと推定されています。

絵図は上下2段に分かれていて、上段には西方浄土の様子が描かれ、下段にはお釈迦様のお説法の様子が描かれています。上段の中心には阿弥陀如来、その両側には観音菩薩、勢至菩薩が極彩色の蓮台の上にお座りになり、いま現に法を説いておられるところであります。阿弥陀如来の前には八功徳水が充満した七宝池が広がっています。その池には、四色の蓮華が咲き、青色は青光、黄色は黄光、赤色は赤光、白色は白光の光を放ち、その蓮華の上では、新しく浄土へ生まれた方が合掌しておられます。またその池の周りは欄楯(らんじゅん)が廻らされ、七重の羅網(らもう)・七重の行樹(ごうじゅ)も見えます。
上の方に目をやれば、阿弥陀如来の上には種々の鳥や雅楽の楽器が空中を舞い、それらはつねに天の楽を奏でています。また、天人は妙華を器に持ち、他方の十万億の仏を供養されるのです。このような西方浄土の様子が、細かく鮮やかに描かれています。

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絵図の下段にはお釈迦様を上方中心に、東方、南方、西方、北方、上方、下方の六方に諸仏がおられ阿弥陀如来を讃嘆されています。そのお釈迦様の前には舎利仏尊者が合掌して座られ、その後ろに大弟子、また諸菩薩様や無量の天人がおられ、お釈迦様のお説法を聞いておられます。
そして下方は9分割され、それぞれ阿弥陀経の教説に従って「七重の欄楯・七重の羅網・七重の行樹」「七宝の池と池のなかの蓮華」「常に天の楽をなし、曼陀羅華(まんだらけ)を雨(あめふ)らす」「このもろもろの鳥、昼夜六時に和雅の音を出す」「かの仏の寿命およびその人民〔の寿命〕も無量無辺阿僧祇劫(むりょうむへんあそうぎこう)なり」「諸上善人とともに一処に会する」「阿弥陀仏、もろもろの聖衆と現じてその前にましまさん」「もし信あらんものは、まさに発願してかの国土に生るべし」「仏の所説を聞きたてまつりて、歓喜し信受して、礼をなして去りにき」のそれぞれのシーンが描かれています。

阿弥陀経の世界を視覚的に表現したこの『阿弥陀経変相図』を見ると、この世の命を終え浄土に生まれてゆく具体的な情景がわかります。ややもすれば理屈ばかりに拘って、宗教を観念的に捉えてしまう現代人に、新鮮な感銘を与えてくれる絵であろうと思います。